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お考えの通りです。教育・学習文法では、普通、時刻の前に前置詞atを、日や月日や曜日の前に前置詞onを、それ以外の期間の前に前置詞inを使うと教えますが、日常会話や親しい友人同士のメールのような格式張らない英語や、簡潔であることが求められるニュース記事では、日や月日や曜日の前に前置詞のonをつけないこともよくあります。
質問者があげておられる用例以外の用例を五つばかり下にあげます。
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(On) Saturday night I went to bed at midnight.--Murphy (2004, pp.243, 363) |
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I don't go out (on) Monday mornings.--Murphy (2004, p.242) |
(3) |
Something else a bit unusual happened (on) that day.--Eastwood (1994, p.296) |
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See you (on) June 21st.--Alexander (1988, p.150) |
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It appears now that when the committee meets May 30, a compromise will be reached, in which a portion of the delegates from both states or, more likely, just Florida will be awarded to the candidates. (委員会が5月30日に開かれるときに、妥協案が出され、その二つの州の、もっと可能性が高いのは、フロリダ州の代議員の一部が二人の(民主党)大統領候補者に配分されることになるだろう。)-- Russell Goldman, "Clinton Still in the Game, but Wants Rules Changed," May 22, 2008.
<http://abcnews.go.com/Politics/Vote2008/Story?id=4905785&page=3>
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一つの記事の中でも前置詞onをつけたりつけなかったりすることがあります。一例をあげましょう。NYDailyNews.comのDaily NewsにMichael McAuliff and Michael Saul, "Obama, Clinton debate in Philadelphia," Updated Thursday, April 17th 2008, 1:22 AM という記事があります(accessed on August 24, 2008)が、記事の最初にヒラリー・クリントン氏とバラック・オバマ氏がディベートしているカラー写真が掲載されています。(<http://www.nydailynews.com/news/politics/2008/04/16/2008-04-16_obama_clinton_debate_in_philadelphia.html>)
写真のすぐ下に
Hillary Clinton and Barack Obama go at it on Wednesday night in Philadelphia.
(ヒラリー・クリントンとバラク・オバマが、土曜の夜、フィラデルフィアで激しく議論を戦わせる)
という説明文がつけられています。この英語ではWednesday nightの前にonがついています。
しかし、写真に続く本文は
PHILADELPHIA -Hillary Clinton and Barack Obama, in what may be their final debate, hammered at each other's campaign lowlights Wednesday night as Clinton insisted she is the Democrats' best hope to win in November.
(フィ ラデルフィア発―土曜の夜、最後となるかもしれないディベートで、クリントンが、自分が11月の[大統領]選挙に勝てる民主党一番の希望の星だと主張した ことが呼び水となり、ヒラリー・クリントンとバラク・オバマは、お互いの選挙運動の汚い部分を激しく攻撃し合った。)
というパラグラフで始まります。このパラグラフの英語ではWednesday nightの前にonがついていません。
上で見てきた諸例では、日や月日や曜日を表す句は、いずれも、動詞を修飾しています(副詞的に働いています)が、これらの句は、名詞句中に現れて、名詞を修飾する(形容詞的に働く)こともできます。以下、後者のタイプの例をいくつか見てみますが、ここでも前置詞onは省略することができます。
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The concert Wednesday was short.--Anderson (1983-84, p.11) |
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The analysis tomorrow will be more objective.--Anderson (1983-84, p.11) |
(8) |
That seems to echo Dean’s call Friday for uncommitted superdelegates to announce their endorsements by July 1. (オバマの発言は、まだどちらの大統領候補者を支持するか決めかねている代議員は7月1日までに支持候補を明らかにすべしとのディーンの金曜日の呼びかけを繰り返しているように思われる。)-- FOXNews.com, "Obama Says Clinton Can Run ‘As Long as She Wants,’ Expects Resolution by June," Saturday, March 29, 2008.
<http://elections.foxnews.com/2008/03/29/obama-says-clinton-can-run-as-long-as-she-wants-expects-resolution-by-june/> |
(9) |
In his remarks Tuesday, Mr. Obama did not mention becoming the first American of color with a real chance at being president of the United States, and, of course, most of the Democrats who had voted for him were white.--Marcus Mabry, " Many Blacks Find Joy in Unexpected Breakthrough," June 5, 2008. (オバマ氏は、木曜日の発言の中で、アメリカ合衆国の大統領になる本当の可能性をもった最初の有色アメリカ人になることについて触れなかったし、もちろん、彼に投票したほとんどの民主党員は白人だった。)
<http://www.nytimes.com/2008/06/05/us/politics/05race.html?_r=1&adxnnl=1&adxnnlx=1213621654-UKCcX41k9kSub0m3SbWogA&oref=slogin> |
上で見たとおり、日や月日や曜日の前の前置詞onはつけないことがあります。では、一体どうしてそのような変化が起こったのでしょうか。私は、SundayからSaturdayまでの曜日の前に前置詞onを置かなくてもよくなったきっかけは、意味上、及び、形態上、それらに近いyesterdayやtodayやtomorrowの振る舞いだったのではないかと思います。
SundayからSaturdayまでの曜日は、いずれも、yesterdayやtodayやtomorrow同様、日を表していますので、yesterdayやtodayやtomorrow同様、前に前置詞を置かなくてもいいだろうと推定したのだと思います。また、SundayからSaturdayまでの曜日は、いずれも、形態上はdayという語で終わっています。その点ではyesterdayやtodayと同じです。そのことも曜日の前に前置詞を置かないオプションを後押ししたのではないかと思います。
上の(4)と(5)の例は、月日の前にも前置詞onをつけないことがあることを示しています。月日は日を表します。月日の前に前置詞onを置かなくてもよくなったのは、月日が、意味上、yesterdayやtodayやtomorrowに近いということも当然あったでしょうが、月日の場合は、SundayからSaturdayまでの曜日の前に前置詞onを置かなくてもよくなったことにも後押しされたのだろうと思います。
引用文献
Alexander, L. G. (1988) Longman English Grammar, Longman, London.
Anderson, Mona (1983-84) "Prenominal Genitive NPs," The Linguistic Review 3.1-24.
Eastwood, John (1994) Oxford Guide to English Grammar, Oxford University Press.
Murphy, Raymond (2004) English Grammar in Use: A Self-Study Reference and Practice Book for Intermediate Students, 3rd ed., Cambridge University Press, Cambridge.
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