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II. 意味拡張理論の問題点 しかし,この考え方は正しくありません。次の (17)-(20) に見られるように,意味が stretch されていても,もとの不規則変化を継承するケースはいっぱいあります。 [i] 不規則動詞に接頭辞がついてできた動詞は,もとの動詞と意味が変わっても,もとの動詞の不規則変化形を継承する。 (17) overeat, overshoot → overate, overshot [ii] 不規則名詞に別の語を付加して新しい意味の複合語をつくっても,できあがった複合語は不規則変化形を継承する。 (18) superman, superwoman → supermen, superwomen [iii] 不規則名詞を比喩的に使ってもその名詞が不規則変化することは変わらない。
石油業界では油田やパイプラインから石油を盗み取る人のことを比喩的に oil mouse, oil mice と言うそうです。 [iv] 不規則動詞を含むイディオムはもとの動詞の不規則変化形を継承する。 (20) これだけ反証があるということは意味拡張理論が正しい一般化をとらえていないということの証拠でしょう。 III. 心理的実在性 Kim et al. (1991) が被験者に実際に判断させたのは次のような例です。 (21) When guests come, if they arrive with slides my hopes for a lively evening quickly sink. When I saw Bob and Margaret carrying six boxes, my hopes sank instantly. (22) When guests come, I hide the dirty dishes by putting them in boxes or in the bempty sink. 意味拡張理論が正しければ,動詞を比喩的あるいは拡張的に使っている (21) のような例で規則変化が好まれるでしょう。語構造理論が正しければ,動詞を名詞由来動詞として使っている (22) のような例で規則変化が好まれるでしょう。 被験者は,どの動詞の場合にも,動詞を比喩的あるいは拡張的に使ったときより,名詞由来動詞として使ったときに規則形を好むという実験結果が出ました。この結果は,意味拡張理論ではなく,語構造理論が正しいということを証明しています。 今日は語の規則変化と不規則変化がどのような原理で決定されているのかを具体例に基づいて見てきました。There's more to regular and irregular verbs and nouns than meets the eye! ということを実感していただけたでしょうか。 REFERENCES 京都教育大学教授 岡田伸夫 「英語の教え方研究会 Newsletter 4月号」より |