英語研究室

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英文法Q&A

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関西外国語大学教授 岡田伸夫が英文法をQ&A方式で教えます!

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more than one of the studentsが主語のときには動詞は単数形と複数形のどちらで受けるのですか。

Q.24 どうして次の(1)では動詞がareでなく,isになっているのでしょうか。
 
(1) More than one of the students is going to study abroad.

more than one of the studentsの意味は「その学生の中の1人以上」なので,複数形のareが正しいのではないでしょうか。「1人以上」には「1人」も含まれるのでisでもいいということなのでしょうか。
 
A.24

主語と動詞の一致の原則は「主語が単数形(1つのものを指す)なら動詞の単数形で受け,主語が複数形(2つ以上のものを指す)なら動詞の複数形で受ける」ですが,質問者が気づかれたように,一筋縄ではいかないところがあります。

ご質問にお答えする前に,more than i の意味に関する質問者の誤解を正しておきましょう。more than ii 自身を含みません。He is taller than her.が「彼は彼女より背が高い」であり,「彼が彼女と同じ背の高さ」を含まないのと同じです。それに対して,日本語の「i 以上」はi を含みます。したがって,(1)more than one of the studentsを「その学生の中の1人以上」と訳すことはできません。正しい訳は「その学生の中の2人以上」です。

more than oneの数の問題はfewer than twoの数の問題といっしょに考えるとよくわかります。次の4つの例を比べてください。
 
(1) More than one of the students is going to study abroad.
(その学生の中には留学予定の学生が2名以上います。)
(2) ×More than one of the students are going to study abroad.
(3) Fewer than two of the students are going to study abroad.
 (その学生の中で留学予定の者は2名未満です。)
(4) ×Fewer than two of the students is going to study abroad.

fewer than i は,more than i 同様,i 自身を含みません。したがって,fewer than two of the studentsは「その学生の中の2人以下」ではなく,「その学生の中の2名未満」,言い換えると,「その学生の中の1名」なのです。それでも,fewer than two of the studentsisではなく,areで受けます。

(2)(4)が非文法的だということは,more than one of the studentsfewer than two of the studentsに続く動詞の数を決定するものがそれらの意味ではないということです。では,何がそれらに続く動詞の数を決定しているのでしょうか。more thanfewer thanを消す(無視する)と何が残りますか。one of the studentstwo of the studentsですね。実は,more than one of the studentsfewer than two of the studentsに続く動詞の数を決定するのはmore thanfewer thanの後続部分なのです。

もう1つおもしろい表現があります。「many a+単数名詞」という表現をご覧になったことがありますか。硬い英語あるいは古風な英語ですので,ひょっとしたらご覧になったことがないかもしれません。次の(5)の例文を見てください(Longman Dictionary of Contemporary English, 4th ed.manyのエントリーにあがっている例文です)。
 
(5)

Many a parent has had to go through this same painful process.
(たくさんの親がこれと同じ苦しい過程を経なければならなかった。)


many a+単数名詞」の意味は「たくさんの…」ですが,この表現が主語になると単数形の動詞が呼応します。動詞は,「many a+単数名詞」の意味ではなく,manyに続く「a+単数名詞」の形に引かれて単数形の動詞で呼応するのです。

最後に分数の例を見てみましょう。1を3等分した1つをthirdと呼びます。3分の1はthirdが1つあるのでa (あるいはone) third,3分の2はthirdが2つあるのでtwo thirdsです。次の(6)を見てください。
 
(6) a. One third of the milk was spilled.
(ミルクの3分の1がこぼれた。)
  b. One third of the men were bachelors.
(その男性の3分の1が独身だった。)

one third of the 名詞」の文法上の数を決めるのはどの部分でしょうか。上の(6)bでは,one thirdが単数形であるにもかかわらずbe動詞はwereになっています。ということは,one third of the menの数を決定しているのはmenの部分ということになります。

逆の例を使って見てみましょう。3分の2はtwo thirdsですが,(6)bmenが数を決定していますので,(6)bmenの位置に来るものが単数名詞であれば,それが動詞の単複を決定する(単数形の動詞を要求する)はずです。次の(7)を見てください。
 
(7) Two thirds of his property goes to his son.
(彼の財産の3分の2が息子に行く。)

(7)ではpropertyという単数名詞が使われているので動詞がgoesになっているのです。

以上,(ァ)more thanから始めて,(ィ)fewer than,(ゥ)many a+単数形名詞」へと進み,最後に(ェ)分数を取り上げ,主語名詞句の単複の概念ではなく,主語名詞句の一部の形が動詞の単複の形を決める場合があるということを見てきました。
 
大阪大学教授 岡田伸夫
2004年11月26日