姉二人が妹に「服を片付けてくれたら明日ポプシクルをあげるよ」と言ったので,妹が姉の服を片付けたのですが,妹が翌日になって姉に「ポプシクル ちょうだい」と言うと,姉は「明日あげると言ったでしょう。今日じゃないよ」と言って,妹にポプシクルをあげなかった。どこにでもありそうな話ですね。
(2) |
They promised me a popsicle tomorrow. |
tomorrowが動詞の過去形といっしょに使われている次の(3)は非文法的ですからこのような疑問が出てくるのは当然です。
(3) |
×They gave me a popsicle tomorrow. |
でも,動詞promiseの意味を考えてみると,(2)には取り立てて奇妙なところはないとも考えられます。(2)の内容は次の(4)で表わすこともできます。
(4) |
They promised to give me a popsicle tomorrow.
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(4)では,tomorrowは,過去形の動詞promisedではなく,不定詞giveを修飾しますから,何も問題はありません。(4)にyesterdayを加えて次の(5)に変えても何ら差し支えありません。
(5) |
Yesterday they promised to give me a popsicle tomorrow. |
(5)は,私にポプシクルをくれる日が明日(彼女らが約束を守ってくれればの話ですが),約束した時間が昨日ということです。(5)のyesterdayは過去形の動詞promisedを修飾しています。
おもしろいことに,(2)にyesterdayを加えて次の(6)にしてもおかしくありません。
(6) |
Yesterday they promised me a popsicle tomorrow. |
質問者が(1)の下線部の英文について感じた疑問は,動詞promiseがpromise to giveのような意味で二重目的語構文で使われると考えれば解消されると思います。
動詞promiseの過去形とtomorrow afternoonがいっしょに使われている例をあげます。
夫は明日手術をしてもらうことになっているので今日は絶食中です。焼いたパンのおいしい匂いに耐えかねて,「フェアじゃないよ」と訴えてきた夫に,「明日の午後になったら一切れあげるから(今日は我慢して)ね」と妻が約束しています。
動詞offerも,promise同様,未来志向ですから,過去形で,未来を表わす副詞といっしょに使うことができます。次の(8)を見てください。
(8) |
We got to Texas about 2pm and hung out with the sisters and niece. About 6:30 we went to have dinner at Laura and Kristi's. It was cool hanging out and I got to get to know Kristi more. She's pretty alright. We looked at pictures from their trip to the Bahamas and Kristi asked me if I could come over tomorrow to help with a computer program. Laura also offered me a car tomorrow if I needed it. I think I may go hang out with them and see what some friends are doing tomorrow night, if I can.
< http://www.livejournal.com/users/_midnight_blue_/?skip=50>
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下線部の英文は「さらにローラは,必要だったら明日車を使っていいよとも言ってくれた」という意味です。
時間を表わす語句が,動詞promiseの意味であるpromise to giveのpromiseにかかるかgiveにかかるかあいまいな例もあります。
次の(9)を見てください(梶田1976, p.93)。
(9) |
She promised her son a new car when he passed the examination. |
(9)のwhen節は,彼が試験に通ったときに約束したという意味でとることもできますし,試験に通ったときに車をあげると約束したという意味でとることもできます。
ここで,promiseから少し離れて,動詞の過去形と未来を表わす語句との共存関係についてもう少し検討してみましょう。be going toは未来を表わすので,次の(10)はごく自然な文です。
(10) |
I'm going to play tennis with you tomorrow. |
では,次の(11)はどうでしょうか(Close 1975, p.258)。
(11) |
I was going to play tennis with you tomorrow, but I won't be able to now.
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I was going to play tennis with you tomorrow.は,「つい今しがたまで,明日,君とテニスをするつもりだった」(those were my intentions till recently)ということを言っている文です。but以下のI won't be able to now.は,「でも,できなくなったよ」(but I won't be able to now)と予定変更を告げているのです。
次の(12)に見られるように,一昨日の時点で昨日あることをしようと予定していたような場合には,その予定していたことを昨日実際にしたか,しなかったかは不明です。
(12) |
You were going to play tennis yesterday afternoon.
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そのことは,上の(12)に対して次の(13)のaとbのどちらで答えてもよいという事実からもわかります(Close 1975, p.258)。
(13) |
a. |
I did play. |
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b. |
I couldn't play after all . |
では,次に進みましょう。次の(14)と(15)がどういうことを表しているかわかりますか(Huddleston 1976, p.344; Dudman 1983)。少し手強いのではありませんか。
(14) |
Yesterday John was coming tomorrow. |
(15) |
Yesterday John came tomorrow.
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大丈夫です。今までに習得した英文法の知識をステップバイステップで使っていけば正しい理解にたどりつけます。現在進行形のis comingは予定を表わします。(14)の過去進行形was comingはその予定がなくなったということを表わします。つまり,(14)は,「昨日の段階では今日来る予定だったが,現時点では,もうその予定がなくなり,今日は来ないことになった」ということを表わします。
現在形のcomesは確定的な予定を表わします。しかし,それをcameにすると,その予定がなくなったということを表わします。したがって,(15)は,「昨日の段階ではジョンが明日来ることが確定していたのだが,今日になってその予定が変更されて,結局,彼は来ないことになった」ということを表わします。
(14)も(15)も,一見見慣れない英語で,見たら構えてしまいますが,このように既知の知識をステップバイステップで使っていけば何もむずかしくはありません。(14)も(15)も,「昨日の段階ではジョンは明日くることになっていたのだが」という日本語で考えれば,何も困ることはありません。
引用文献
Close, R. A. (1975) A Reference Grammar for Students of English, Longman, Harlow
Dudman, V. H. (1983) “Tense and time in English verb clusters of the primary pattern,” Australian Journal of Linguistics 3, 25-44.
Huddleston, Rodney (1976) “Some theoretical issues in the description of the English verb,” Lingua 40, 331-383.
梶田優(1976)『変形文法理論の軌跡』大修館書店.