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『英語の構文150 Second Edition』の記述をしっかり読んでくださってありがとうございます。まず,最初に言っておきますが,(1)の文は完全に文法的です。
さて,「It is difficult for some people even to admit their mistakesは肯定文である」というご指摘はその通りです。私は「否定文に続けて用い」という表現で「否定的内容に続けて用い」というような意味を表そうとしたのですが,誤解を招く表現でした。p.244の解説文は,一番早い訂正する機会に次の(3)のように訂正したいと思っています(このエッセーがアップされる頃にはもう訂正されているだろうと思います)。
(3) |
"much (/still) less ... "は否定的内容に続けて用い,「まして...ない」,「なおさら...でない」という否定の意味になる。
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以下,「否定文」と「否定的内容」という表現が意味するところの違いについて少し詳しくお話します。確かにIt is difficult for X to Yは肯定文です。そのことは次のようにして証明することができます。次の(4)と(5)から明らかなように,付加疑問文は,普通,主節が肯定文なら否定文,主節が否定文なら肯定文になります。
(4) |
John is smart, isn't he?
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(5) |
Her sister is not diligent, is she?
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では,It is difficult to ...とIt isn't difficult to ...には肯定と否定のどちらの付加疑問文がつくのでしょうか。次の(6)と(7)を見てください。
(6) |
It is difficult to stand on a ball, isn't it? |
(7) |
It is not difficult to comprehend the theory, is it? |
It is difficult to ...に否定の付加疑問文が,It is not difficult to ...に肯定の付加疑問文がつくということは,It is difficult to ...が肯定文,It is not difficult to ...が否定文であることの証拠です。
その限りでは,『英語の構文150 Second Edition』, p.244の「much (/still) less は否定文に続けて用い」の部分は若干正確性を欠きます。ちなみに,2003年1月10日発行の『ウィズダム英和辞典』第1刷のmuch lessの説明(p.1149)は「否定の内容の後に続けて」です。また,2003年4月1日発行の『ジーニアス英和辞典』第3版第3刷のmuch lessの説明(p.1075)は「否定的語句の後で」です。
しかし,「~することは困難だ」という日本語からも想像されるように,It is difficult for X to Yには否定的な含みがあります。そのことは次の事実によっても支持されます。一般的にanyやeverは否定的な文脈で用いられます。次の(8)と(9)を見てください。
(8) |
We didn't buy any flowers. |
(9) |
Nothing ever seems to upset him. |
また,英語にはlift a fingerのように否定的な文脈の中でしか使われないイディオムがあります。次の(10)の(a)と(b)を比べてください。
(10) |
(a) |
×He lifted a finger to help me with my homework.
(彼は私が宿題をするのを手伝うのに指一本動かした。)
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(b) |
He didn't lift a finger to help me with my homework.
(彼は私が宿題をするのを手伝うのに指一本動かさなかった。) [日本語でも「指一本動かす」は普通,否定的文脈でしか使いません]
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おもしろいのは,このanyやeverやlift a fingerがIt is difficult to ...の文脈でも用いられるということです。次の(11)-(13)を見てください。
(11) |
Due to changing local conditions, it is difficult to predict any major wind patterns.
(その土地土地で条件が違うので,大きな風のパターンを予測することは困難だ。)
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(12) |
It is very difficult to imagine motorbikes ever successfully taking the place of stock horses in rougher country.
(バイクがそれほど開発されていない土地で首尾よく家畜の馬に取って代わると想像することは困難だ。)
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(13) |
I've grown disillusioned with my job and feel ashamed about my performance on the job, but I have found it difficult to lift a finger to try to move on to something better (and with my work history, I’m cynical that something "better" even exists for me).
(私は自分の仕事に幻滅を感じるようになり,私の仕事のできばえを恥ずかしく思っています。でも,もっといい仕事に変わろうとしてみることは困難です。
(また,私の職歴では,私に「もっとよい」職業があるかどうかに関しては悲観的にならざるをえません。))
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(11)-(13)がOKだということはdifficultが否定的な文脈をつくることの証拠です。
reluctantも,形の上では肯定文ですが,否定的な意味文脈をつくります。次の(14)の二文と(15)-(17)を見てください。
(14) |
(a) |
He's reluctant to go, isn't he? |
(b) |
He isn't reluctant to go, is he? |
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(15) |
I'm reluctant to draw any conclusions.
(私はどのような結論も導きたくはありません。)
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(16) |
He has always been reluctant to admit that he ever changes his mind.
(彼は自分が心変わりすることがあるということを認めるのをずっといやがってきた。)
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(17) |
I would be very, very reluctant to lift a finger to help them.
(私は彼らを助けることには気乗りしません。)
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そして,reluctantに続く部分にmuch lessを用いることができます。次の(18)を見てください。
(18) |
Many of the companies seem to be reluctant to admit, much less discuss, their participation in the tobacco industry.
(その会社のうちの多くは,たばこ産業に参入していることを認めることを,さらに,そのことについて議論することをいやがっているように思われる。)
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(18)がOKだということはreluctantが否定的文脈をつくるということの証拠です。
さらに,動詞のdoubtも形は肯定ですが,意味は否定です。次の(19)の二文と(20)-(23)を見てください。
(19) |
(a) |
He doubts that she will arrive in time, doesn't he? |
(b) |
He doesn't doubt that she will arrive in time, does he? |
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(20) |
I doubt that there's any way that will ever stop her.
(彼女を思いとどまらせる方法は何もないと思う。)
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(21) |
I doubt that anyone will ever pay me to do the sort of things I want to do.
(だれかが私にお金を払って私がしたいことをさせてくれるようなことはないだろうと思う。)
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(22) |
I doubt that anybody would lift a finger to help me.
(だれかが私を助けようとしてくれるとは思われません。)
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(23) |
I doubt that he admits his mistakes, much less apologizes for them.
(彼は自分の間違いを認めようとはしないし、ましてや自分の間違いを謝ろうとはしないと思う。)
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以上、いただいたご質問をきっかけに、形の上での「否定文/肯定文」というコンセプトと意味の上での「否定的内容/肯定的内容」というコンセプトがずれる場合があるということを具体的に見てきました。
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