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英文法Q&A

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関西外国語大学教授 岡田伸夫が英文法をQ&A方式で教えます!

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41

climb up the mountainはupを目的語の後ろに回してclimb the mountain upとしてもいいですか。

Q41

「~を調べる」という意味のlook up ~ は、「look up 目的語」という順序だけでなく、upを目的語の後ろに回した「look 目的語 up」という順序も可能です。たとえば、look up the wordのほかに、look the word upとすることもできます。climb up the mountain (その山に登る) はどうでしょうか。upthe mountainの後ろに回してclimb the mountain upとすることもできますか。

 
A41

「~を調べる」という意味のlook up ~ の順序はご指摘のとおりです。たとえば次の(1)の下線部には(a)(b)のどちらを入れることもできます。

 

(1)

If you don't know what something means, use a dictionary to ___________.
(a) look up the word 
(b) look the word up

このlook upにはもう一つおもしろいことがあります。目的語が代名詞itであれば、必ずupitの後ろに回さなければなりません。

 

(2)

If you don't know what something means, use a dictionary to ___________. 
(c) look it up 
(d) *look up it [*は後続表現が非文法的ということを表します]

ところが、お尋ねのclimb up the mountain*climb the mountain upとすることはできません。

 

次の(3)(a)-(d)をご覧ください。

(3) (a) I climbed up Mt. Asama with my wife before the war. 
(b) *I climbed Mt. Asama up with my wife before the war.
(c) Talking of Mt. Asama, I climbed up it with my wife before the war.
(d) *Talking of Mt. Asama, I climbed it up with my wife before the war.

(b)*climbed Mt. Asama upが非文法的なので、(d)climbed it upも非文法的です。表面上は同じupを使っていてもlook upupclimb upupは振る舞いが違うのです。

上のlook upと同じ振る舞いをするイディオムをもう少しあげてみましょう。「やめる」という意味のgive upもそうです。

 

次の(4)では(a)-(c)はいずれもOKですが、(d)はアウトです。

(4) (a) I'll have to give up smoking, it's killing me!
(b) I'll have to give smoking up, it's killing me! 
(c) I'll have to give it up, it's killing me! 
(d) *I'll have to give up it, it's killing me!

ぶっそうな例ですが、blow up (爆破する)もそうです。

 

次の(5)(a)-(c)はすべて文法的ですが、(d)はアウトです。

(5)

(a) Terrorists blew up the building. 
(b) Terrorists blew the building up. 
(c) Terrorists blew it up.
(d) *Terrorists blew up it.

 

put on (着る)やtake off (脱ぐ)もlook upと同じ振る舞いをします。

(6)

(a) The child put on a turtleneck sweater.
(b) The child put a turtleneck sweater on. 
(c) The child put it on.
(d) *The child put on it.

 
(7)

(a) The child took off the warm sweater. 
(b) The child took the warm sweater off.
(c) The child took it off. 
(d) *The child took off it.

 

一方、walk down Shijo Streetとかrun along the riverなどは、climb upと同じ振る舞いをします。

(8)

(a) We slowly walked down Shijo Street windowshopping. 
(b) *We slowly walked Shijo Street down windowshopping.
(c) We slowly walked down it windowshopping. 
(d) *We slowly walked it down windowshopping.

 
(9)

(a) He used to jog along the river in good weather. 
(b) *He used to jog the river along in good weather.
(c) He used to jog along it in good weather. 
(d) *He used to jog it along in good weather.

どうして「~を調べる」という意味のlook upclimb upupが違った振る舞いをするのでしょうか。

一つおもしろい表現がありますから、それを使って説明します。

次の(10)の文で使われているblow downはどういう意味だと思いますか。

(10) The wind blew down the chimney.

実はこの文は次の(ア)(イ)の二通りに解釈することができます。

(11)

(ア) 風が煙突を吹き降りた。
(イ) 風が煙突を吹き倒した。

(10)の文を見ているだけでは気がつかなかったかもしれませんが、(10)(11)(ア)と解釈するか、(イ)と解釈するかで発音が違います。

(ア)と解釈するときには、普通、downには強勢が置かれませんが、(イ)と解釈するときには、普通、downに強勢が置かれます。

look up the wordupにも強勢が置かれます。それに対して、climb up the mountainupには強勢は置かれません。どうして発音まで違うのでしょうか。

 

実は、同じdownでも、(ア)と解釈するときには前置詞なのです。前置詞には、普通、強勢は置かれませんね。

一方、(イ)と解釈するときには副詞なのです。この場合には前の動詞といっしょになって複合動詞をつくります。

これらのことを踏まえてblow down the chimneyの二つの構造を図示すると、次の(12)(ア)(イ)になります。

(12)

 

では、次の(13)はどういう意味でしょうか。

(13) The wind blew the chimney down.

downが前置詞のときには、the chimneyはその目的語で、down the chimneyがひとまとまりになっています。前置詞のdownはいつでも目的語の前に現れます。目的語が代名詞itであっても、その後ろに回されることはありません。目的語の後ろに回してよいのは副詞ですから、(13)(11)(イ)の意味になります。(11)(ア)の意味にはなりません。

 

次の(14)も同じです

(14) The wind blew it down.

 

では、次の(15)はどういう意味でしょうか。

(15)

The wind blew down it.

もしdownが副詞であれば、目的語がitですから、必ずその後ろに回して(14)にしなければなりません。

しかし、(15)ではdownitの前にあります。ということは、このdownは前置詞ですね。したがって、(15)(11)(ア)のほうの意味 (吹き降りる) です。

前置詞downは直後の名詞とひとかたまり (これを文法的には前置詞句と言います) になりますから、次の(16)に見られるように、文頭や文中の他の位置に動かすことができます。

(16)

(a) Down the chimney the wind blew. 
(b) It was down the chimney that the wind blew.

(16)(a)(b)の意味は(11)(ア)です。

 

また、前置詞は、形式ばった英語ではwh疑問詞や関係代名詞にくっついて文頭に動いて行くことができます。

(17)

(a) Down which chimney did last night’s strong wind blow? 
(b) The inside of the chimney down which last night's strong wind blew must be clean.

(17)(a)(b)の意味はどちらも(11)(ア)のほうの意味 (吹き降りる) です。

上で「~を調べる」という意味のlook upを取り上げましたが、実はlook up ~ には「~を見上げる」という意味もあります。この場合にはupは前置詞で、walk down Shijo Streetdownrun along the riveralongclimb up the mountainupblow down the chimney (煙突を吹き降りる)のdownと同じ振る舞いをします。つまり、「~を見上げる」という意味のlook up ~ は (12)(ア)の構造をしています。

 

一つおもしろいことを付け足しておきます。look up ~ が「~を調べる」という意味の複合動詞として使われるときには、lookupの間に副詞が割って入ってくることはありません。

(18)

(a) They looked up the information quickly
(b) *They looked quickly up the information.

 

それに対して、upが前置詞のときには動詞lookupの間に副詞が割り込んでくることがあります。

(19)

(a) They looked quickly up the chimney. (彼らは急いで煙突を見上げた)
(b) They looked up the chimney quickly. (同上)

 

複合動詞のupが目的語の後ろに回されると、副詞はその前後に現れることができます。

(20)

(a) They looked the information quickly up.
(b) They looked the information up quickly.

 

ここらで最初のclimb up the mountainに戻ることにしましょう。このupは前置詞です。

したがって、*climb the mountain up*climb it upにすることはできません。また、このupには、普通、強勢を置きません。

しかし、次の(21)(a)(b)(22)は文法的です。

(21)

(a) Up the mountain I climbed with my wife just after we got married.
(b) It was up the mountain that I climbed with my wife just after we got married.

 
(22)

Hey, look at the tallest mountain over there. That’s the mountain up which my parents climbed just after they got married.

 

 
大阪大学教授 岡田伸夫
2007年2月11日