英語研究室

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英文法Q&A

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get toのもう1つの意味

Q52 カナダ人の女性のウェブサイト(<http://www.atypicallife.com/just-another-sunday-afternoon-in-makuhari/#comments>)に下の英語がありました。

The plaza just outside the Kaihin Makuhari train station in Chiba is always a hive of activity, especially on the weekends, and this Sunday afternoon was no exception. I usually try to avoid the areas on the weekends because of all the crowds that gather to go one of the many events held at Makuhari Messe or to attend a Chiba Lotte Marines baseball game. But yesterday I met my hubby over there for lunch and while I was waiting for him I got to enjoy some of the entertainment.

最後の文は「でも、きのうはランチをいっしょにするために海浜幕張駅前で夫と待ち合わせました。待っている間にそこで繰り広げられるエンターテインメントを楽しむようになりました」という意味でしょうか。私にはgot to enjoy some of the entertainmentを「エンターテインメントを楽しむようになりました」と訳すのが何となくしっくりきません。もっと言うと、get to ~を「~するようになる」と訳すことに抵抗を持ちました。どのように考えたらいいのでしょうか。
 
A52  私も今、このウェブサイトを開いてみましたが、週末には多くの人が海浜幕張駅前に集まってくるようですね。私も近くに住んでいれば一度行ってみたいです。

 それはさておき、上の英文で一か所気になった箇所があります。go one of the many events held at Makuhari Messeは、原文のままですが、これはoneの前に前置詞のtoを入れて、go to one of the many events held at Makuhari Messeとしたほうがいいです。

 さて、get to ~には「~するようになる」とは別の意味があるのではないかというご推測ですが、その通りです。学校では教えていないかもしれませんが、get to ~には「~するようになる」という意味のほかにもう1つ重要な意味があります。get to ~が「~するようになる」という意味をもつのは、後ろにbe, dislike, feel, know, like, realize, see, understandなどの状態動詞が来るときです。

 下の(1)-(3)に『オックスフォード現代英英辞典(OALD)』と『ロングマン現代英英辞典(LDOCE)』と『コリンズコウビルド英英辞典(CCED)』の例文をあげます。
 
(1) After a time you get to realize that these things don't matter.―OALD
(2) It'll take a while for you to get to know everyone.―LDOCE
(3) Miller and Ferlinghetti got to be friends.―CCED

 しかし、get toには「~する機会が得られる」という意味もあります。『オックスフォード現代英英辞典』は(informal) to have the opportunity to do sthと定義し、次の2つの例文をあげています。
 
(4) He got to try out all the new software.
(5) It's not fair―I never get to go first.

 『ロングマン現代英英辞典』も、上の『オックスフォード現代英英辞典』同様、(informal) to have the opportunity to do somethingと定義し、次の2つの例文をあげています。
 
(6) We got to meet all the stars after the show.
(7) She gets to travel all over the place with her job.

 『オックスフォード米語辞典(NOAD)』もhave the opportunity to doと定義し、次の例をあげています。
 
(8) He got to try out a few of these new cars.

 Merriam-Webster's Online Dictionaryにはto be able <never got to go to college>という定義と用例があがっています。この定義ですと、「~することができる」という意味になります。

 『コリンズコウビルド英英辞典』は、If you get to do something, you manage to do it or have the opportunity to do it.と定義し、次の例文をあげています。
 
(9) How do these people get to be the bosses of major companies?
(10) Do you get to see him often?
(11) They get to stay in nice hotels.

 定義の中にmanage toという表現が使われているので、日本語の「なんとか/どうにか~する」という意味になることもあるということがわかります。

 「get to ~=~するようになる(=come to ~)」と覚えることも必要ですが、一旦公式的に覚えてしまうと、get toがそれ以外の意味で使われることがあるということが見えにくくなるということも警戒しなければなりません。get toの「~する機会をもつ」「~することができる」「なんとか/どうにか~する」という意味を上の例文で確認しておいてください。

 さて、さらに、面白いことに、get toには「特権/特典として~することが許される」(=be privileged to ~)という意味もあります。以前、Edward Quackenbush氏から、「get toにはbe allowed toとかbe privileged toの意味もある。get to ~have to ~の反対の意味だ。」と教えていただいたことがあります。Quackenbush氏からいただいた例を4つばかりあげましょう。
 
(12) I had to help my father in the garden, but my sisters got to go swimming.
(ぼくは庭で父の手伝いをしなければならなかったのだが、姉や妹は泳ぎに行くことが許された)
(13) I saw the president, but I didn't get to shake his hand.
(大統領に会えたが、握手はすることができなかった)
(14) If a batter is hit by a pitched ball, he gets to go to first base.
(バッターはデッドボールを受けたら一塁に進むことができる)
(15) The lucky winner gets to spend two weeks on a luxury cruise ship, all expenses paid.
(幸運な優勝者は、無料で遊覧大型客船で2週間過ごす特典が得られます。)

 これらの例文中のget to ~が「特権/特典として~することが許される」という意味で使われていることは明白です。

 お尋ねいただいた上の英語のgot to enjoy some of the entertainmentは、そこでご主人を待っておられたために、「運よく、そこで繰り広げられるエンターテインメントを楽しむことができた」というような意味で使われています。

 be privileged to ~の意味をもつget to ~は、アメリカ英語の口語では頻繁に用いられています。しかし、教室ではこの用法はあまり教えられていません。have to ~とのコントラストを利用して、have to ~が「~する義務をもつ(be obliged to ~)」という意味であるのに対して、get toは「~する特権が得られる(have the privilege to ~)」という意味であると整理すれば、学習者にはそれほど負担になりません。get to ~の「特権/特典として~することが許される」という意味も覚えておきましょう。
 

大阪大学教授 岡田伸夫
2010年4月10日